鳥籠
鳥籠
陽香(はるか)
唯依(ゆい)
湊(みなと)
蒼太(そうた)


普通の教室。唯依、湊、蒼太の3人が話している、そこへ陽香が入ってくる

陽香「みんな、はじめまして。今日からよろしくね。」
唯依「わあ、ハルカちゃんってすごく綺麗だね。」
蒼太「なんか雰囲気違うな、転入生って感じだ」
湊「歓迎するよ。何かあったら言ってね。」



唯依「最近、クラスの雰囲気変わった気がするよね〜」
湊「ハルカが来てからじゃない?中心って感じになってるし」
陽香「そんなことないと思うけどなぁ」
蒼太「まあ、でも悪くないな。楽しいし」
唯依「ね!まじで雰囲気変わった!
陽香「......ねえ、ちょっと提案があるんだけど……」
唯依「ん?なになに?」
陽香「みんなで、“かごめかごめ”……やってみない?」
湊「え?なんで急に“かごめかごめ“なんだ?」
蒼太「てか久しぶりに聞いたわ、懐かしいからやろうぜ!」

(教室で“かごめかごめ”をする4人。)

陽香「かごめかごめ〜籠の中の鳥は〜いついつ出やる〜夜明けの晩に〜鶴と亀とすべった〜後ろの正面だあれ〜?」
唯依「え、なんか変な感じがする……」
蒼太「体が動かない……」
湊「く、苦しい……」
陽香「え!?みんな大丈夫!!??」

暗転
薄暗い異世界の教室。唯依と蒼太が床に倒れている。陽香が椅子に座っている。
明転

唯依「……ん……ここ、どこ……?」
蒼太「いてて……なんだよ、これ……教室……?」
唯依「でも、なんか変……暗いし、空気も重い……」
蒼太「窓の外、真っ黒じゃん……昼じゃなかったか?」

(椅子に座っていた陽香が静かに笑う)

陽香「ようこそ。目、覚めた?」
唯依「陽香!?なんで……?いつの間に……」
蒼太「おい、ここ、どこなんだよ!?ふざけてんのか……?」

(そこへ湊が扉の外から走り込んでくる)

湊「……いたか!よかった、二人とも無事――ってわけでもなさそうだな。」
唯依「湊……!湊も……?」
蒼太「湊、どこにいたんだよ?」
湊「気づいたら、変な廊下に一人でいた。ここを探してたら、声が聞こえてきて……それで……妙な気配がするんだ。黒板の裏……何かある。けど、近づくと頭が締め付けられるような感じがして……」
唯依「黒板の裏……?」
陽香「あーあ、感じちゃった?さすがだね。」
蒼太「お前……なんか、おかしいぞ……」
陽香「私?なにもおかしくないよ。ただ、ちょっとここに詳しいだけ。」
湊:「詳しい……?……お前、何を知ってるんだ?」
陽香「ふふ。それは、もう少ししたらわかるかもしれないわね。」

湊、黒板の方へ近付く

湊「黒板の裏、何も……いや……うそだろ……」
蒼太「何も見えない。ただの壁じゃねえか……!」
唯依「じゃあ……あの湊が感じた物は何だったの……?夢……?いや、違う……違う……!」
陽香「ふふ……可哀想に、残念だったね?でも、ここからは出られないよ。」
湊「……お前、何か隠してるな。」
陽香「隠してなんか、ないよ。ただ……ここが私の場所なだけ。」
蒼太「意味がわかんねぇよ!俺たちをこんなところに閉じ込めて、何がしたいんだよ!!」
唯依「ねぇ陽香、本当に帰れないの?ねぇ、お願いだから教えてよ……」
陽香「帰れる人は、帰れる。でも……全員じゃない。運が良ければ、ね。」
湊「ふざけるな……!お前、最初から――」
陽香「(かぶせるように)ねぇ、知ってる?“かごめかごめ”って、どうして歌われると思う?……誰かに飼われているから。ここにいる人は外の世界に出てはいけないと決められているから。この世界は、そういう場所なの。」
蒼太「じゃあ……お前が……この世界の“飼い主”ってことか……?」
陽香「言い方が悪いなぁ…。私は……ここにいる鳥、この“鳥籠の世界“のあるじよ。だけど、時々は“鍵”にもなる。誰かをこの世界に閉じ込めて、誰かを逃がす。その役目を、何度も繰り返してきた。」
唯依「そんなの、どうして……!」
陽香「ねぇ、帰りたい?……じゃあ、試してみる?不思議なオーラの出る“あの場所”を、もう一度。」
湊「……それが最後のチャンスってことか。」
陽香「行けばいい。でも覚えておいて。誰が戻れるかは――“ここの世界”が決めるの。……あなたたちは、運があると良いね?」

暗転
現実の教室。唯依、蒼太、湊がいる。
明転

湊「ここ……戻ってきたんだな。間違いなく現実だ。」
唯依「信じられない……鳥籠の世界から、本当に戻れたなんて。」
蒼太「あんな世界……二度と行きたくない。」
湊「でも、陽香は……?」
唯依「まさか、まだあの中にいるの?」
蒼太「……あの世界に閉じ込められたままか?」

暗転。
異世界の教室。陽香が一人、静かに黒板の前に立っている
明転

陽香「ここが私の“鳥籠の世界”。何度も繰り返す、終わらない遊び。これからも、これから先も人がいる間は永遠に終わらない。……かごめかごめ〜籠の中の鳥は〜いついつ出やる〜夜明けの晩に〜鶴と亀とすべった〜後ろの正面だあれ〜?……この“鳥籠の世界“に次来るのは貴方かもね?

暗転


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