福島サテライト
「福島サテライト」

◆梗概
 東日本大震災の大地震と津波で発生した原発事故により、福島県浜通りの高校生たちは避難を余儀なくされました。突然の避難、放射線への不安、見知らぬ場所での学習、友人との別れなど、さまざまな困難に見舞われた高校生たち。この物語は、南相馬市から福島市へ避難した生徒たちの様子を描いたものです。「福島サテライト」とは、福島市の高校に設置された、南相馬高校の分校です。当時の高校生のリアルを描きました。

◆キャスト
小林先生
生徒1・門馬えま
生徒2・遠藤りん
生徒3・影山れおな
影アナ

開幕(照明はついている)
【生徒たちのガヤ、フェードイン】
◆一場(南相馬高校の教室)
りんは舞台中央で成績表を眺めている。足元にはバックが置かれている。

えま  (雑巾を持ち、上手から入ってきて)はぁー、掃除終わったー! やっと春休みに突入できるーー!。 何見てんの?

【生徒のガヤ、フェードアウト】

りん  成績表。
えま  学年末、どうだった?
りん  まあまあかな。ロッカー清掃、終わったの?
えま  (雑巾をくるくる振り回しながら)完璧! 下の学年の人たちは幸せだねぇ。私が隅々までぜーんぶきれいにしたから。雑巾がけまでしたんだよ!(エラそう。りんの成績表をのぞき込む)
りん  (成績表を慌てて隠しながら) えまはどうだった?
えま  私はやばい。あれじゃあお母さんに怒られる。大学に行けないって。
りん  私も、第一志望には程遠いなぁ。
えま  でも私はいいの。3年に進級できれば。(雑巾を丁寧に伸ばし、しわを取っている)
りん  えまは、いつも気楽でいいね。うらやましい。
えま  人をバカみたいに言わないで! 私は私で、これでも苦労はあるのよ~。
りん  ぜんっぜんそんな風には見えない。いつもお気楽な感じがするよ。悩みなんてないって感じ。
えま  失礼な! 進路については、私だって悩んでる。なんなら、人生についても、時々考える。(悩んでいるフリ)
りん  みんな、いろいろあるよね…今日は早く終わったから、高校2年終了と、受験生突入を記念して、
えま  うんうん。
りん  気分転換に、どっか遊びに行こう!
えま  いこいこ!
りん  どこがいいかな?
えま  カラオケなんかどう?
りん  いいねぇ、カラオケ!
えま  じゃあ、それで決まり!

えまはカバンに成績表をしまい込む。
突然、携帯から【緊急地震速報のアラーム】が鳴る。ふたりはあわてて携帯を取り出す。

りん  地震!
えま  地震だ!

【地鳴り】が聞こえてくる。次第に大きくなり、爆音へ。
ふたりは不安な表情で寄り添いしゃがみ込むと同時に、緊急地震速報と地鳴りがぴたりと止む・照明がステージサイドライトに切り替わる
ふたりは、おびえた表情のままフリーズ。
ゆっくり暗転。(ふたりは退場)


◆二場(「2011.4.6 東日本大地震から26日 サテライト開設の連絡」南相馬高校。小林が生徒にメール送信)
ステージ前部中央に単サスがさす。そこに小林登場。

小林(礼をして、用紙を読み上げる)
「『福島県相双地区県立高等学校生徒の学習機会の確保について』。平成23年4月5日に、福島県教育委員会から発表された内容を、保護者の皆様にお知らせいたします。双葉、浪江、富岡、南相馬、南相馬農業、小高商業、小高工業の各高等学校に在籍している生徒を対象に、サテライト校を開設することになりました。
サテライトとは、県内5地区の協力校の空き教室や体育館を使って授業を行う方法です。生徒数が、原則として、一つの地域において一つの学年で10名以上になれば、サテライトを開設します。私たち南相馬高校のサテライト協力校は、県北は福島西高校、県中は郡山高校、会津は会津高校、いわきは磐城高校、相双は相馬高校です。
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