目薬がさせなくて
「目薬がさせなくて」 作・東 詩依
【登場人物】
大人1
大人2
舞台は小高い山の上にある展望台である。街の景色と遠くの山々が一望できる。
舞台下手にベンチ、中央にキャンバスと画材が置かれている。
◯展望台(昼)
1が絵を描いている。キャンバスには龍が描かれている。
仕上げまであと一歩というところで筆が止まる。踏ん切りがつかず描くことができない。
下手より2がやって来る。
2はハイキング中であり、リュックには熊鈴が結ばれている。
鈴の音を聞き、そちらを見る1。
ベンチに座り、リュックを下ろす2。1がこちらを見ていることに気づくと、軽く会釈する。
1も会釈を返し、作業に戻るが、やはり描くことができない。
2、飲み物を口に運びつつ、興味深そうに絵を眺める。
1、描くことを断念する。
つかつかとベンチまで歩き、2の隣に座る。
おもむろにため息をつく1。
1 はぁ……。
2、話しかけるか少し悩んだ後。
2 龍、ですか?
1 え?
2 あの絵です。あなたが描かれている。
1 あぁ……そうです。……龍に見えますか?
2 えぇ。
1 今の時点でも?
2 え? はい……。
1 そうですか……。
少し間。
2 あの、何かマズいことを言ったでしょうか……?
1 あぁいや、そういうわけではないのですが……。
2 でも何やら、落ち込んでるように見えます。
1 ……欠けてるんです。あの絵には。
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