まよいごの星
まよいごの星 谷崎白
千鐘江 幸/ジョバンニ(ちかえ ゆき) 17
佐山 斗真/カムパネルラ(さやま とうま) 17
佐山 実殊/ナレーション(さやま みこと) 24
宮島 凜(みやじま りん) 13
黒衣 燭/救助隊B(くろい しょく)30
金子 苹果/救助隊A(かねこ りんご)18
ラジオパーソナリティー/狩鳥野(かりとや)42
SE:列車の走行音
ジョバンニ「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなのさいわいのためならば僕のからだなんか百ぺん灼やいてもかまわない。」
カムパネルラ「うん。僕だってそうだ。」
ジョバンニ「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」
カムパネルラ「僕わからない。」
ジョバンニ「僕もうあんな大きな暗やみの中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
カムパネルラ「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」
ジョバンニ「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」
ナレーション「ジョバンニこう云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座すわっていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。ジョバンニはまるで鉄砲丸のように立ちあがりました。そして誰にも聞えないように窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。」
斗真「嫌だ。こんな結末、認めない」
幸「えーと。大きい荷物はもう送ったし、あとは着替えでしょ、ジャージに暇つぶしのゲーム。シャンプーって普通に使えるんだったっけ。まあいいやもってこ! あとは」
幸、一冊の文庫本を手に取る。
幸「これだね。よし準備オッケー!」
電話が鳴る。
幸「あ、どうしよう、斗真だ」
幸、出る。
幸「も、もしもし」
斗真「お疲れ。お前今どこ?」
幸「今から出るとこ!」
斗真「はぁ? 待ってるから早く来い」
幸「え、うわ! ごめん! すぐ行く!」
通話が切れる。
斗真「ったく」
実殊「そんなきつい言い方しなくていいのに。まつっていっても、車で座ってるだけなんだしさ」
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