骨まで食むこと、愛すこと
二人一役ver
骨まで食むこと、愛すこと
作:星水慕

登場人物
主人公:私(二人一役)
(私)は理性と本能が同時に声を出す。
旦那を失った29歳のOL。旦那を失ったことを受け止めきれず、未だ整理がつかないでいる。

理性の人格(理性)・・・主人公「私」の理性的な部分。小説調の語りを担う。実際の音ではなく、演劇的でリアリティが少ない、俯瞰的な視点での台詞を担当。理性と言っても感情をこめて読んで大丈夫です

本能の人格(本能)・・・主人公「私」の本能的な部分。演劇的で日常的な、実際の音声を担う。主に、第三場が見せ場。



本編
第一場

理性 死体とは、死んだ生き物の肉、或いは散った灰のこと。骨、それは死体とは、少し呼びづらい

    
    明転。舞台上に喪服姿の、理性と本能の二人の私が入っていく
    本能と理性、周囲に頭を下げる
この時、理性と本能の二人の動きを揃えて、観客に二人一役であることをアピールする
木魚の音が静かに鳴る

理性 先日、夫が事故に遭い、葬儀を行った。その全般を私が執り行ったのである。彼の両親は早逝であったため、互いの、少なくなった親族の内の、更に数人が集まった、ごく小規模な葬儀だった

本能 本日は、主人のためにありがとうございます

理性 享年30、昨年婚約をし、幸せを受け取り合う、その頃のことであった

    火の音が静かに鳴る
    火葬後、骨を骨壺に納めるところを二人で見ている

理性 彼の若々しかった肉体も、葬儀の一通りを終えた頃には、その面影を残さず、ただ脆く儚げで、今にも凍えそうな骨と、いくらかの灰に変わっていた。斎場の係員が灰を集めて骨壺に納める様子を見て

本能 あなた・・・・・・?

理性 ・・・なんとも難しい気持ちになった

私  ・・・涙は出なかった

理性 ただ少しだけひもじい心地がした

    場面変化。彼の故郷の田舎町へ移動する。彼の死をきっかけに理性と本能の距離が離れて、人間的に歪な状態になっていることを表現する。
    理性、車に乗ってはけるイメージ。上手側にはけ、その後上手側に用意した椅子に座り、舞台を本能に譲る
    本能、葬儀の場に取り残されるイメージ
    本能、田舎町への移動が終わり次第、ハッとして、自分の意識を戻す

理性 葬儀が終わった後、骨壺を抱えて車に乗り込み、彼の故郷の、田舎町へ向かった。現在は仕事を休職し、この町で平屋を借りている。広々とした解放感のある家で、1人では寂しい程だ

本能 こんな家に住んだなら・・・・・・

    演出、骨壺へと注目

理性 彼の骨は、まだここにある。寂しさがあれば紛らわそうと思い、まだ墓には埋めず、生活の傍らに置いてある。私は時折、壺から慎重に骨を取り出し、気まぐれに眺めてみるのだ

    本能、骨を眺めるようなそぶりのあと、少し目を背ける

本能 久しぶりに、会いたいな・・・・・・
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