犯罪予備軍Gメン
   犯罪予備軍Gメン

   人物

 吉岡悟(24)フリーター
 Gメン(40)中年男性
 Gメン2(32)GメンGメン
 通行人男性 最近の若者Gメン 
 通行人女性 アンチコメントGメン
 米子(62)宗教団体の勧誘員

〇スーパー・入り口前(夕)
   夕日が傾きかけた歩道。
   スーパーの袋を片手に持ち、吉岡悟が店から出てくる。
   すれ違いざま、男が吉岡に近づく。中年の男、黒いジャンパー姿。
Gメン「すみません。少し中を見せてもらえますか」
   吉岡、足を止め、顔を上げる。
   しばらく袋と男を見比べてから、警戒するように後ずさる。
吉岡「……え? なんでですか」
Gメン「そちらの袋の中です。確認だけで結構です」
吉岡「いや、自分、何もしてないんで……」
   吉岡、スーパーの出入り口を一瞬振り返る。
   Gメン、ゆっくりと吉岡に歩み寄る。目は据わっている。
Gメン「勘違いしないでください。私は万引きGメンじゃない」
   吉岡、さらに一歩退く。
吉岡「じゃあ、誰なんですか」
Gメン「犯罪予備軍Gメンです」
吉岡「何ですか、それ」
Gメン「君のような、生活に張りがなく、目に力がない人間を、私はマークしている」
   吉岡、あきれたような、しかし恐れるような表情を浮かべる。
   吉岡、無言で袋を持ち替える。
   Gメン、突然手を伸ばし、吉岡のスーパー袋に手をかける。
   吉岡、反射的に後退するが、Gメンは素早く袋を奪う。
   中から、ライター、サラダ油、ペットボトル飲料が取り出される。
   Gメン、一つひとつを地面に並べていく。
Gメン「ライター、サラダ油……この組み合わせ、意味が分かりますか?」
   吉岡、首を傾げる。
Gメン「火ですよ、火! 油に火をつける……それしかないでしょう!」
吉岡「違いますって! どっちもたまたま切れただけです!」
   吉岡、ペットボトルを持つ。
吉岡「これなんてただの飲み物ですよね」
Gメン「一見ね。でも凍らせれば鈍器になる。知ってるでしょう?」
   Gメン、ペットボトルを奪い、振り下ろすような仕草をする。
Gメン「そして、君が最近、コンビニのバイトをクビになったことも調査済みだ!」
   吉岡、息を呑む。
吉岡「なんでそれを……?」
   Gメン、にやりと笑う。
Gメン「監視してるからに決まってるでしょう。犯罪予備軍の動向は、逐一チェックしています!」
   Gメン、地面に並んだ品々を指差す。
Gメン「これが無実の買い物だと……君は言い切れるんですか?」
   地面に並ぶ買い物袋の中身。
   その前に立つGメンと、後ずさりする吉岡。
Gメン「……私はね、君のこと、2週間ほど前からマークしてたんですよ。あなた、ホームセンターで黒いビニールテープを買いましたよね。あれで憎い店長を縛って、店に火をつけるつもりだったんじゃないですか?」
吉岡「はあ?」
Gメン「さらに、レンタルショップで借りたDVD……タイトル覚えてますか?」
   吉岡、首を傾げる。Gメンは手帳を開きながら読み上げる。
Gメン「『完全犯罪の夜』。決まりですね」
吉岡「偶然ですよ! たまたま気になっただけで……」
Gメン「『たまたま』が積み重なると、『意図的』になるんですよ! さあ観念しなさい。警察に行きましょう」
吉岡「こいつヤバすぎる」
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