ガーボ(短編)
ガーボ

栄   ガーボが好き。舞台に一人の栄が座っている。
    手には小さなハンマーを持っている。

栄   みなさんはガーボって知っていますか?あの、ほら美味しいやつですよ。あれ?その反応
    は知らない?勿体無いなぁ。あんなに美味しいのに。だって、外はカリッと中はトロッと
    それでいてしっかりした歯応えがあるんです。初体験なんだこれが!初めて食べた時は感
    動というか感極まって泣いちゃったんです!人前じゃなかったのが勇逸の救いだった
    なぁ。ほっぺたが落ちるというか爆発?弾けるような感覚でした。あ!別に変な薬品って
    訳じゃないですよ?でも、それくらい美味しって言える気もします!少し前に流行りまし
    たよね?麻薬玉子みたいなやつ!実はあれ、私は食べてないんですよ。なんかありますよ
    ね?気になっていたけど食べてないもの!映画とかアニメとかでも多いんですよ私。アキ
    ラとかウォッチリストに入れてるけど見てなくて…あ!でもパプリカは見ましたよ?あれ
    は名作でしたね!なんてたって音楽と演出が…ってすみません。本題がらずれてしまいま
    したね。それでガーボなんですが、本当に知らないんですか?あんなに美味しいんだから
    結構有名なのかと思ってたんですが。嘘ついてたりしますか?嘘ってあんまり好きじゃな
    くて。あ、逆に私が嘘をついてることっては無いです!本当にガーボってあるんですよ!
    嘘だと思うなら紹介しますよ美味しいお店!他とは違って絶品なんだこれが!いや、どこ
    も美味しいから「特に美味しい」って表現が正しいです!そうです!場所は…あれ?すみ
    ません。ド忘れしちゃって。あれ?あれ?どこだったかな?渋谷?上野?あれ?呉服町?
    あれ?ほんとすみません!全然思い出せなくて。でも、本当なんです!本当にお店があっ
    てガーボを食べたんです。すごく美味しくて。だって、ほっぺたが落ちて。あれ?ほっぺ
    た?ほっぺた。ほっぺたがある。どうして?ガーボを食べた時に爆発して。すみません。
    すみません!なんか、残念だな。すごくおすすめしたいのに。場所も何も思い出せないん
    です。

    外から声がする「加藤さん。どうされました〜?」。

栄   またか。また私のガーボを邪魔するのか。私だけのガーボを。私だけのガーボだ。誰にも
    渡さない。私だけの。私だけの。私だけのガーボ。そういうことか。だからか。そうか。
    通りで。腑に落ちた。良かったなぁ…。いつか私のガーボを振る舞ってあげますよ。美味
    しいだ。ほっぺたが爆発しますよ。脳がビカビカするって感じで。初体験だと思います。
    楽しみにしておいてください。じゃあ、順番がありますから。生意気にも待ち時間があり
    ましてね。大丈夫。私は嘘を吐きません。じゃあ、一旦おやすみなさい。

    高くハンマーを振り上げる栄。

    暗転。
    サイレンの音して銃声が聞こえる。

    終わり。
1/1

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム