氾濫!天の川の乱
【登場人物】
織姫:天の川の隅にある粗末な宮殿に暮らしている。
彦星:女遊びがひどすぎて天帝にハゲワシにされた。下界に落とされ現在行方不明。
諏訪武太子(スワンたいし):天帝からの使者。天帝の子で、見た目は白鳥。
危機(きき):現代日本に生きるアパレル店員。双子の姉。
裸裸(らら):現代日本に生きるアパレル店員。双子の妹。
天帝:天の川の中心にある宮殿で、政務を行っている。
○織姫の宮殿(満天の星)
織姫が機織りをしている
織姫「私の夫、私の愛しい人。今年の七夕こそはお会いできますか。もう何十年も天の川の隅に一人。どうして会いにきてくださらないのです。それとももう、この世には…」
その時、諏訪武太子が到着する
諏訪武太子「たのもーう」
機織りを放り出して駆け寄る織姫
織姫「これは、恐れ多くも帝の御子、太子様その人が。こんなこと、あの人が行方しれずとなってから一度たりともなかった。もしや、あの人が見つかったとの知らせやもしれぬ。いいえ、きっとそうに違いない」
部屋に通される諏訪武太子
諏訪武太子「お初にお目にかかります。スワンと申します。あっ、しかし織姫様と私は宮殿で一回お会いしていますよね。私が幼き時に」
織姫「ええ。太子様もご立派になられて。あの、今日は一体なぜ」
スワン「ああ。帝の代理です。天帝も直接会いに行けばよろしいものを、ほら向こう様にも都合ってもんがあるでしょ、とか言って結局私に押し付けたのですよこちらに文を預かっております。天帝からの」
織姫「え?」
天帝からの文を受け取る織姫
織姫「前略、彦星の捜索は、この二十年の歳月を経ても実をを結ぶことがなかった。もはや無事の帰還は絶望的といえよう。 捜索は、…この文をもって打ち切りとする…」
文を落とし崩れ落ちる織姫
織姫「そんな、嘘よ、あの人が帰ってこないなんて。ああ、あの日、娘と一緒に夜ご飯の買い物に行ってくれるって言うか ら、じゃトイレットペーパーもお願いねって言った私が悪かったんだわ。そのまま帰らぬ人になるなんて」
号泣する織姫と呼応するように天の川が氾濫し始める
スワン「わっ、ちょっと!泣かないでください織姫様!水!水やばいって!静まりたまえー!」
織姫「私の愛しい人を返せ!さもなくば皆死んでしまえ!」
荒れ狂う川に宮殿が飲み込まれそうになったその時、危機と裸裸がカヌーに乗って登場
危機「お客様〜何かお探しですか〜?」
あっけに取られる二人。途端に氾濫は静まる
スワン「え?」
危機「え待ってお客様超色白〜ブルベ羨ましいです〜」
スワン「ぶるべ?」
危機「お姉さんお召し物ほんと素敵ですねえ〜チャイナ系ですか?ちょっと前人気でしたよね〜!うちでも取り扱ってるんで え〜よかったらぜひご覧くださいませえ〜」
織姫「なんだ主ら、私を誰だと、ってかどっから入ってきた?」
危機「私たちですか?一応都内でアパレル店員やってます、危機って言います。こっちは裸裸ちゃん〜。」
裸裸「いらっしゃいませえ〜」
スワン「なんだろう。なんか危ない気がする」
危機「えっすごいそうなんですよ〜!危険の危に機械の機で危機って名前なんです〜。危ないですよねウケる〜」
織姫「どんな名付け親だ!」
危機「ね、ほら、名前聞かれてるよ?行っときなよ」
裸裸「あっ、えっとお〜。裸に裸って書いて〜、ララって読みます」
織姫「こっちのがもっと危ない!」
スワン「ねえ待ってもしかして君たち、下界から来たの?」
裸裸「え、お兄さん外科医なんですか?ステキ〜!」
危機「えぶっちゃけ年収とか聞いちゃっても大丈夫ですか?」
スワン「あ、これ合コンにきたら迷い込んだ人間たちだ」
危機「最初きた時〜え男性の方お一人?って思ったんですけどお〜なんか全然問題なかったかもですう〜ね?裸裸ちゃん?」
裸裸「モーマンタイですう〜」
スワン「え〜まあ一応実家太いっちゃ太いんで〜」
危機「わ〜いらっしやせ〜」
裸裸「店内全品50%オフです〜」
キキララ「どうぞごらんくださいませえ〜」
織姫「やかましいぞ主ら!我の宮殿で好き勝手しおってこの痴れ者が!下界だと?二度と聞きたくない!ここで我もろとも死ぬが良い!」
スワン「おやめください!」
織姫が機織りの杼(シャトル)を振りかざす
裸裸「あれっ。こちらてもしかして〜」
裸裸が機織りの方に向かっていく
織姫「あっ待って、違うのこれは!」
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