妻と毒
「妻と毒」(どくとつま)

男A:男
女性:人質、恋人、妻
神様:神
男B:立てこもり犯、誘拐犯、自殺志願者
男C:看板担当、狙撃隊隊員、恋人の兄


幕上がる

男C、看板掲げる。「立てこもり現場」の文字。ラウンドガールのように周りに見せてから立ち去る

男A、手にハンドマイク持って

 男A:「無駄な抵抗はよせ。」
 男B:「黙れ。車だ。車を用意しろ!」
 男A:「建物は完全に包囲した。もうお前の逃げ場はない。おとなしく観念して人質を解放しろ。抵抗するだけ無駄だ。」 

男B、窓から顔を出す。横に人質の女性。女性の首筋に銃を突き付けている

 男A:「よせ。これ以上罪を重ねるんじゃない。」
 男B:「それ以上近づいたらこの女を殺す。それよりも車だ。車を用意しろ。」
 男C:「警部、いい加減許可を。いつでも準備はできています。」
 男A:「だめだ。人質の命が最優先だ。」
 男C:「これ以上長引かせれば、その人質が持ちません。」
 男A:「くそ。このままでは埒が明かない。いっそ俺が人質になる。奴が油断したらいつでも撃て。それまでは待機だ。」
 男C:「またそうやって。ただし遠慮はしないからそのつもりでいてくださいよ。」
 男A:「おい! 今車の手配がついた。ただ、このままだと人質になっているその女性が持たない。俺が代わりに人質になるから、女性を解放しろ。」
 男B:「黙れ。近寄るな。」
 男A:「俺は無抵抗だ。ほら、このとおりだ。」 

男A、両手を広げて前に歩き出す

 男A:「これから入口まで行く。そこで人質を交換だ。俺を人質にしたほうが要求が通りやすくなる。おとなしくその女性を開放するんだ。」 

男A、さらに近づく。

 男B:「近づくな! 俺をだまそうとしても無駄だ。そうやって取り押さえるつもりだろうが、そうはさせねえ。」
 
男B、女性の首に銃を強く押し当てる

 男A:「よせ! 落ち着け!」
 
男A、立ち止まる 

銃声
 
男A、倒れる
 
暗転
 
明転
 
男C、看板掲げる。「ビルの屋上」の文字。ラウンドガールのように周りに見せてから立ち去る
 
男A、登場。少し立ち止まり、左右を見回してから少し駆け出し、止まる

 男A:「どこに隠れた!」
 男A:「隠れてないで出てこい。」
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