励起、発光、夜空の大輪。
励起、発光、夜空の大輪。

登場人物
    ホシズミ(女) 高校2年生。文系。科学は定期テストの点数が悪いので、実験レポートで内申点を稼ぐタイプ
    ハラ(男) ホシズミの親戚の別の学校の教師。専門は科学。悪気はないのだがすぐに思ったことが口にでる

○ あらすじ
    とある港町の花火大会の一コマ。
    夏休みに入ったホシズミと、親戚で別の学校の教師をしているハラは花火大会を楽しんでいる。

○ とある港の花火大会の会場(夜)
    ガヤ。
    花火大会の指定席で寛ぎながら、二人は空を見上げている。

ホシズミ「わー! きれー!」
ハラ「お、リチウム・カリウム・ナトリウムだ」
ホシズミ「…あっちも! おおきーい!」
ハラ「アルカリ金属、綺麗だね。最高、惚れ惚れしちゃうよ」
ホシズミ「…ちょっと」
ハラ「うん?」
ホシズミ「ここまで科学の話持ってこなくても良いじゃん! 夏休み位、学校のことは忘れたいの!」
ハラ「そうかいそうかい」
ホシズミ「そうそうだからね、」
ハラ「(被せるように)で、この前の科学のテストはナンボだったの?」
ホシズミ「う、ぐぐぐ…48」
ハラ「え? なんて? もう一回言ってみ?」
ホシズミ「よんじゅーはってんです! でも赤点回避したから補習は無し!」
ハラ「赤点は?」
ホシズミ「45!」
ハラ「すごいね! 全然胸を張って良い点数じゃないよ!」
ホシズミ「それお父さんにも言われた! これ以上言わないでよー!」
ハラ「はい、じゃあ復習。炎色反応で炎の色が変わる元素は何だっけ?」
ホシズミ「ふふん、そこは完璧ですよん。リチウム・ナトリウム・カリウム・銅・カルシウム・ストロンチウム・バリウム!」
ハラ「習うのはそこら辺かな。正解。じゃあ発光する原理は?」
ホシズミ「(思い出しながら)…温められてバラケた原子が、安定している基底状態から、熱を受けて力を得て励起する。で、その励起状態からまた基底状態に戻るときに発光する事で、力を逃がす…だったよね?」
ハラ「うん、そうだね。そこまで分かってて赤点ギリだったの?」
ホシズミ「それ以外がぼろっかすでした!」
ハラ「胸を張れることではないよ」
ホシズミ「冷たくしないでよ〜、ハラにいちゃーん!」
ハラ「明日、テスト見せてね」
ホシズミ「(ふてくされて)…はーい」
ハラ「まぁ今日は、赤点と補習回避ってことで、存分に花火を楽しみなさいな」
ホシズミ「やったー!」

    会場アナウンスが流れている

ホシズミ「ほら、ハラ兄ちゃん! 今日は「夜空に大輪が咲くのをお楽しみください」だって! 花火見よ!」
ハラ「はいはい…そうだ、お腹空いてこない?」
ホシズミ「うん!」
ハラ「次の花火の、色がどの炎色反応の金属元素か言えたらアメリカンドックとかき氷を買ってあげよう」
ホシズミ「…言えなかったら?」
ハラ「自分の小遣いがあるだろ?」
ホシズミ「…分かった。私は自分の財布を守るために、頑張って答えてみせる!」
ハラ「うん、俺としては次のテストで酷い点を取って欲しくないから言ってるんだけどね」

    一発の花火が上がる

ハラ「さ、あれは何があった?」
ホシズミ「…えっと、バリウム・ナトリウム・銅・ストロンチウム!」
ハラ「最後だけ間違ってまーす、あれはリチウムでーす」
ホシズミ「だって赤かったよ! ストロンチウムだもん!」
ハラ「リチウムはピンク系、ストロンチウムは赤系だよ。残念、自分の飯は自分で買っておいで!」
ホシズミ「納得行かない〜!」

    納得のいかないホシズミはハラにくってかかり、
    教師の面がでているハラは彼女をあしらう。
    やいのやいのと騒いでいる間に照明はフェードアウト、暗��
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