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バスジャック

バスジャック
　
ホリカワ
シチジョウ
マツバラ
カモガワ

　　　ホリカワ、正面を向いて語り。

ホリカワ　　ホリカワヒカリ、１７歳、高校二年生。クラスではいつも端っこにいて目立つような存在じゃない。成績も中の下なので家族に褒められることもない。誰も俺なんかに注目していない。自分に光が当たっていないことは自分が一番よくわかっている。それでも誰かに注目されたい。たくさんの人に自分の方を向いてもらいたい。・・・何か罪を犯せば、皆が俺の方を向いてくれるんじゃないか。そんな歪んだ考えから、俺はバスジャックをすることを決意した。自分のカバンに包丁と縄、バスジャックに使えそうなものを詰め込んで家を出た。バスに乗り込み一番後ろの座席に座る。なんて言って飛び出そう。やっぱり「動くな！このバスは俺が完全にバスジャックした！」とかかな。呼吸を整えいざバスジャック。と思ったその時だった。

　　　バスの車内。運転席にはマツバラがいる。シチジョウが飛び込んでくる。
　　　銃声。

シチジョウ　いいか、俺の言ったとおりにしろ。
マツバラ　　え？

　　　もう一発銃声。

シチジョウ　俺の言ったとおりにしろって言ったんだ！
マツバラ　　は、はい。
シチジョウ　とにかく遠く、人目の少ないところまでこのバスを進めろいいな？
マツバラ　　は、はい。

　　　もう一発銃声。

シチジョウ　動くな！このバスは俺が完全にバスジャックした！

　　　ホリカワ、正面を向いて語り。

ホリカワ　　最悪だ～！完全に先越された～！え、そんなことある？意を決してバスジャックしようと思ったらその車内で先にバスジャックされちゃうことってある？加害者になろうと思って乗り込んだバスで被害者になることってある？もう最悪だよどうしよう。

　　　バス会社で捜査をしているカモガワ。カモガワに電話がかかってくる。

カモガワ　　はいこちらカモガワ。はい。はい。なに？銀行強盗を行った犯人がバスに乗り込み逃走を図っている？場所は？はい。はい。バスの状況は？はい。はい。はい。了解しました。すぐに向かいます。

　　　カモガワ、電話を切る。

カモガワ　　お前ら、一旦このバス会社強盗事件の捜査は中断だ。交番から連絡が入った。銀行強盗の犯人が乗客を乗せたバスを占拠し逃走中だそうだ。犯人は拳銃を所持している模様。バスはこちらの方面に向かっているとのことなので捜索に向かう。いいな。

　　　カモガワはけ。
　　　バスの車内。

ホリカワ　　この状況、逆にラッキーなのか？あやうく犯罪者になるところだったが、被害者になったことで犯罪者にならずに済んだ。これはラッキー？いやいやいや違う違う違う。そもそも俺は犯罪者になってみんなに注目されるためにここに来たんだ。そのためにわざわざバスジャックの準備をしてここに来たんだ。何もラッキーじゃない。ん？待てよ。もしこのまま警察がこのバスジャック犯を捕まえた場合・・・。

　　　ホリカワの妄想の中。カモガワ颯爽と登場。

カモガワ　　警察です！市民の味方警察です！私が来たからにはもう安心！さあバスジャック犯め、観念しろ！
マツバラ　　きゃ～！警察かっこいい～！
シチジョウ　おのれ警察め、捕まってなるものか。

　　　シチジョウ、カモガワに向かって数発銃を撃つがカモガワは華麗にかわす。
　　　カモガワがシチジョウを取り押さえる。

シチジョウ　ぐは！
カモガワ　　皆さん安心してください！憎きバスジャック犯は私警察が完全に制圧しました。
シチジョウ　く、くっそ！
マツバラ　　ありがとう警察～！さすが頼れる警察～！
カモガワ　　ありがとうありがとう。しかし皆さん油断はできません。もしかしたらバスジャック犯の仲間がこの中に紛れているかもしれません。
マツバラ　　な、なんだって！

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