金閣寺と教科書と女なんかは燃やせ
2013年の話です
金閣寺と教科書と女なんかは燃やせ

登場人物

坂下躁介・主人公・セリフ長い・パルコで個展を開く野望がある。彼の母親は一人称が「母さん」で息子である躁介に絵心がないと思っており安定した公務員を勧めている。それを煩わしく躁介は思っている。鬱見夏帆のことを好ましく思っているがフラれる予定。受験を経て勉強と女に心から失望する。やがて現実を見るようになり美術部での日々や美大への夢を恥ずかしく思った彼は絵を全て焼く。ゆくゆくは県内の三流私立の文学部に普通に入学。キャンパスの近くのサイゼリアで鬱見さんと再会する。絵を欲しがる鬱見さん。再度絵を描くと彼女に誓う。彼がサイゼリアを飛び出した瞬間、折しも戦争が勃発する。暴走する某国の戦犯を追いかける某国の軍用車に轢かれ、BADEND
躁介「   」セリフ
躁介(   )録音

鬱見夏帆・ヒロイン・夢は政治家。父親である二階堂文世も政治家。自身は妾の子。母親の家系が精神病患者が多い。母親である鬱見雪穂は日本舞踊の先生として生計を立てているが近年はやはり気狂いを起こしている。主な特徴に生ごみを漁る・道端で急に泣き出す・猫の真似をする・猫にしか心を開かない、など。若年性アルツハイマーであると判明する。父親のスキャンダルによって没落。そこまでは良かったが母親に関心が向けられて批判されることによってアイデンティティを破壊する。かつ若くして労働に苦労することになり鬱病に。父親のことも母親のことも好きではないけれども血の因縁を気にしていて抗おうと努力している。しかし容姿が母親に、思考が父親に似ていくことに苛立つ。保健室の先生である藤咲初美とは遠縁の親戚。故に彼女からは甘く扱われている。
9/25現在、躁介に興味を持った理由が不明。躁介を振る理由も不明。
躁介が死んだ後、健常良平から躁介の絵の画像を入手する。
最終的には首相官邸にその絵の模写が飾ってある場面を描写したいと思います。

健常良平・友達。なぜかぼっちの躁介にしょっちゅうちょっかいをかけてくるクラスメイト。いわゆるスクールカーストの上の方にいて、躁介とかかわらなくても生きていけるのにこうやって毎日茶々を入れてくる。健常者。ド正論を吐く。受験シーズンが激化すると頑張れずにウジウジしている躁介に嫌気が差す。そして当たりが強くなる。
ゆくゆくはAO入試で某超一流都内私立大学に入学。大学に於いてもリア充の頂点を極める。しかし躁介のことを申し訳なく思っているという点で心にいつまでもしこりを持っていて年に一度くらいの頻度でそれを思い出す。実は鬱見夏帆と付き合っていた(鬱見夏帆が退学するまで。退学時にすれ違いに耐えられない、遠距離は難しいなどという理由で振る)躁介が死んだ後、理由があって夏帆に呼び出されて再会する。

担任・男
躁介の母 
保健室の先生・女 
躁介の父 
テロリストの男 
騒ぐ客の女 


一幕

躁介「夢の中で喋ったこともないやつから「君はつまんないね」と言われた。夢の中だったから、煮るなり焼くなりなんなりできたはずなのだが僕は「そうだよなぁ」と納得してしまい無条件降伏を決め込んでしまった。
目が覚めてだめだだめだ、と勢いよく自分を平手で殴った。自分は、超オモシロ人間なのである。勉強に励む能無しや異性に媚を売って狡く生きようとしているやつら、ノイズやプロパガンダに踊らされているとも知らずに陶酔するばかものたちとは訳が違うのだ。僕には僕にしかない世界があるのだ。ゆくゆくは、僕の支持母体でPARCOに個展を開くのだ。」

躁介「僕の学校ははっきり言って進学校だ。進学校じゃないだなんてへりくだってしまったなら、他の県内の高校で進学校と名乗れる学校は二校ぐらいしかなくなる。厨房の頃の僕もこの学校に憧れてしこしこ勉強していたものだ。だけど入ってみたらなんということだろうか。皆が皆変人を自称している。自分のアウトローなところを見せびらかし変だと指摘しあうことによって馴れ合っているのだ。死ねばいい。しかもその節は教員にも表れている。授業の端々に珠玉の蘊蓄を捏ね、「こんな事知ってる俺」を存分にアピールしている。教師にはこんな権限もあるのか。うらやましいな。ふざけるなよ。だいたい、お前らの言う変人なんて全然変人じゃねーんだよ。ドラム叩けるから変人だとか、ちょっとマイナーな音楽の趣味してるから変人だとか、円周率三〇桁覚えてるから変人だとか、連歌作れるから変人だとか、口調が常人のそれではないから変人だとか言ってるけど、それは変人ではない、ただのエリートだ。最後の彼に関して言うならば、彼は確かに狂気を感じるがそこにカリスマ性を感じてこそ皆「変人」と言うのだ。でも変人は変人だろ。変態を指す言葉なんだ。エリートを変人と評すお前らの眼は節穴か。なんなら本物の変態見せてやるよ。
という訳で部員一人の美術部で僕はひたすらに春画を描いてやるのであった。ちょっと前までは一〇人くらい居た。普通に美術部だった。皆平凡に「変人」たがっていた。僕はそんな九人くらいの人々が嫌いだった。そもそも、奴らは美術的な事をしたように感じられない。いつも日常系漫画・アニメの話ばっかりして、そういう類の真似したような作品ばかりぽこぽこ生産しやがっていた。高文連では、僕だけしかまともな作品を出さなかったので、
「もう君たちって美術部じゃなくて、漫画研究部じゃん」
と皮肉を言ってやったら本当に漫画研究部を作りやがった。そして自分以外皆そこに移った。非常に愉快かつ清々した体験であった。」

躁介「もうすぐ学祭であるので、今日も今日とて春画を生産するのである。嘘吐いて一回江戸時代の春画展を観たことがある。顔はさすが平面顔をうまく表現してへのへのもへじみたいな平和な顔であったが下半身に目を向けてみるとなんとまあ性器のグロテスクな事グロテスクな事。陰毛の一本一本に力が籠っていて妖気を感じる。顔はデフォルメされているのに性器は律儀にきっちり描くんかい、と突っ込みたくなる。あとマラがばかでかい。そこにはファンタジーを抱くのかとまた突っ込みたくなる。僕が描こうとしているのは、そんな不気味なものじゃなくって、もっとロマンティックで別の所にファンタジーを求めた可愛い春画を描きたいのである。ヌケるエロい絵を描きたいのである。検索すれば、へのへのもへじみたいな女なんかより数万倍可愛い題材が待っている。童貞の僕でも、性器のビラビラは描ける、まあ学祭では検閲するけど。それと、僕の中にあるロマンティックなものを組み合わせて、僕なりに興奮する春画を描いている。
 健全な精神を養うこの時期に僕は十八禁サイトを駆使していかがわしい作品を生産し続けている。こんな青春は嫌いではなかった。」

躁介「そして、学祭当日。僕だけの美術部は表向きは作品展と称し春画展を行った。煩悩の数だけ作品は作りたかったが、頑張って落書きも合わせて十八点だった。イーゼルに仰々しく飾って、「良ければ黒板に感想をお書きください」だなんて看板も作って。準備万端だ。ちなみに学祭は二日ある。長い。僕は朝飯昼飯晩飯を携えて、じーっと美術室で来客を待っていた。笑えるほど誰も来ない。一日目は誰も来ないまま終わった。寂しい三食だった。二日目、現在昼飯を食っているが誰も来ていない。ここまでくるともはやすがすがしくなってくる。来場者数の集計用紙に「零」と書きつづけているのだが、こうなってくると最後まで「零」であれ、と思うようになってくる。ゆっくりと咀嚼して、四五分かけて昼飯を食べた。そして今度の英語の授業の予習をしこしこやっていると、気が付いたら、来客がいた」

(夏帆、舞台に登場する)

躁介(驚愕だった。友達と呼んでもいい人は数少ないもののいるのだが、そいつらが冷やかしに来るかもしれないとは思ったけれど、そいつらのうちのどれでもなかった。今まで高校で二年とちょっと過ごしているけど知らない見たこともない女子が展示に来ていた。入学早々の人か? にしては大人びている。はぁあああ、もう、何で来やがった)

躁介、向き直り接客する。

躁介「失礼いたしました。よければアンケートにご協力ください。ごゆっくりどうぞ」
夏帆「この絵、全部あなたが描いたんですか」
躁介「得意げになって)あっはいそうですぅ~」
夏帆「なんか、YOUTUBEで上がってる遊郭の画とXVIDEOSの上澄みの映像とここから見える景色を足して三で割ったような、似たような絵ばっかりですね」
躁介「えっ、あ、はい……」
夏帆「あなた、漫研の人たちを馬鹿にしてるみたいですけども。お言葉ですが底の浅さはあなたもなかなか負けてませんよ?」
躁介「(なんて言葉を返したらいいのかわからず、いつもの調子なら、「はっテメーふざけるな俺の世界を罵倒しやがって」とかののしるものだけど、今回は的が得過ぎて、腹が立つけどぐうの音も出ない。頭を総動員して、僕は言い返した)えっ、あなたもXVIDEOSとか見るんですか」
夏帆「まあ見ますよ。いい感じにグロテスクなものも見れるし。あなたは、絵を見た感じグロテスクなものは好きじゃないようですね」
躁介「まあそうっすねー」
夏帆「グロテスクに耐性がなさすぎると見ました。もっと勉強なさった方がいいかと。アンケートは一応書いておきました。それでは(美術室を出る)」
躁介「アンケート、書いてくれてる……「書くに値しません」だって。三年F組。鬱見夏帆。通りがかりでご来場……。へんな、おんな……」

暗転。

二幕
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