その傷跡に祈りを
とある会社の最上階。屋上に繋がるガラス張りの扉の脇に、自動販売機がある。
その自動販売機の前で、高村が疲れきった表情で財布から小銭を探している。

高村「…はぁっ…やってらんねぇ……あのクソ上司…1階から15階までポスター貼りとか。誰が見るんだよ。マジで疲れた…(ため息)……コーヒー飲も」

缶コーヒーの落ちる音。
同時に、モニターの数字が揃い、安っぽいファンファーレ。

高村「お、よっしゃー。当たりじゃん。2本ゲット。サボる口実できたわ…っと。(伸びをする声)ふぁぁ……やっば。雲ひとつない青空じゃん。勝ち組勝ち組。……ん?あれ」

高村、屋上に人影を見つける。

高村「…え…?なに…誰…?女?ってか…え、大丈夫か?あれ…めっちゃ身乗り出してるけど……っ!?やば、落ちそうじゃん…!(扉をガンガンと叩く)ちょ…っ、おい!何して…」

高村、ドアに体当たりする。
勢いよく扉が開く。

高村「おわっ!開いたっ!!」

乾「…!?(ビクリと肩を震わせて、高村の方を見やる)」

高村「あ…(乾と目が合う)…こ…こんちわ。あのー…あはは。ここ開くんすね。知らなくて、俺」

乾「……」

高村「はじめまして。高村って言います。あ…えーっと……職員…の方ですか?」

乾「………えぇ」

高村「あっ、そうっすよね…あはは…すごいな、ここ…今まで中からしか見たこと無かったけど……(乾に近づき、フェンスから下を見下ろす)うぉあ、高いなー」

乾「……(高村に背を向け、帰ろうとする)」

高村「…あ、のっ。…帰っ…ちゃいます?」

乾「……えぇ」

高村「あー、その…ちょっとお話、しませんか。あ、その、お急ぎなら別に」

乾「急いでます」

高村「…あ……はぁ……あ、いや!あ、あのっ、何課の方です?俺もしかしたら、お電話とかで話したことあるんじゃないかなーなんて」

乾「……」

高村「あ、俺、総務課。今、エレベーターんとこにポスター貼ってて…ああいうのって見ないですよねぇ?無駄だと思うんだよなぁ」

乾「……」

高村「あー……んーと…その……」

沈黙

乾「…あの。もういいですか」

高村「や、あの」

乾「失礼します」

高村「え、ちょ!待って!」
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