春の訪れ
『春の訪れ』
 
 
    登場人物
 
  ・金神 胡雪 かながみ こゆき (女)
    白狐。二三〇歳くらい。お淑やか。天然なところがある。
  ・稲木 陽翔 いなぎ はると  (男)
    人間。十八歳。幸彦(ゆきひこ)の生まれ変わり。
  ・仙黒 笠花 せんくろ りゅうか(男)
    烏天狗。胡雪を姉のように慕う。面倒見のいい好青年。
  ・阿菊    おきく      (女)
    獅子。藁吽の双子の姉であり、藁吽の先輩にあたる。八〇歳くらい。しっかり者。
  ・藁吽    こううん     (女)
    狛犬。阿菊の双子の妹であり、阿菊の後輩にあたる。八〇歳くらい。活発。
  ・親             (口調を変えてどちらも可)
  ・彩月            (口調を変えてどちらも可)
  ・さち            (口調を変えてどちらも可)
 
 
 
 
 
親 「今日は手伝いありがとね。会ったことない人の葬儀なんて大変だったでしょ」
陽翔「……ううん。別に」
    明転 電気をつける
親 「明日の夕方くらいにここを出る予定だから、昼はのんびり過ごしなさいな。こんな田舎にくることなんて滅多にないだろうから」
陽翔「わかった」
親 「ここの部屋は好きに使っていいって。布団は…自分で敷けるよね」
陽翔「うん。ありがとう」
親 「トイレとお風呂は出て右ね」
陽翔「わかってるよ。さっき見た」
親 「一応ね。迷子になりたくないでしょ?」
陽翔「そうだね」
親 「じゃあお母さんはまだやらなきゃいけないことがあるから。おやすみ。いい夢見てね」
陽翔「うん。おやすみ」
親 出ていく
陽翔「…………疲れた…」
   陽翔 座る
陽翔「せっかくのお盆が祖母だっていう会ったことない人の葬式で潰れるなんて、最悪」
   陽翔 ため息
   駆けてくる足音&障子が勢いよく開けられる音
   胡雪 出てくる
陽翔「どうしたの…? そんな急いで話な、ら……」
胡雪「幸彦(ゆきひこ)さん…!」
陽翔「……え? 誰?」
胡雪「あぁ…幸彦さん……」
   胡雪 土下座
胡雪「お久しゅうございます。胡雪はずっと幸彦さんなら無事だと信じておりました。おかえりなさい」
陽翔「……え? すみません。多分人違いだと……」
胡雪「いいえ。人違いなはずがないわ。魂のその形、匂い、間違いなく幸彦さんだもの。姿形が違っても胡雪は分かると言ったでしょう? ……それにしても幸彦さんったらまた若くなっているような…? すごいのね。お年を召すと若々しくなる人がいると聞いたことはあるけれど、実際には初めて見たわ。人間って不思議ね」
陽翔「……もしかして酔ってます? 夕食の会場なら出て右側の…あ、よかったら案内しましょうか?」
胡雪「酔っていないわ」
陽翔「口先だけなら誰でもそう言えますよ」
   陽翔 立ち上がる
陽翔「ほら、行きま」
胡雪「布団を敷くのね?それくらい胡雪がやりますわ」
陽翔「……えぇ…?」
   胡雪 布団を敷き出す
仙黒「姉さん!」
1/13

面白いと思ったら、続きは全文ダウンロードで!
御利用機種 Windows Macintosh E-mail
E-mail送付希望の方は、アドレス御記入ください。

ホーム