最果ての北へ
(人物一覧表)
照:水溜(みずため) 照(しょう)(24)…会社員。
遥:鉢(はち)呂(ろ) 遙(はるか)(24)…大学院生。照の親友。

(あらすじ)
 猛吹雪の道路を、水溜照(24)は友人の鉢呂遥(24)と共に車で走っていた。トランクに自らの彼女の死体を乗せて。彼らは彼女が行きたがっていた宗谷岬を目指している。照が彼女を殺したきっかけは、彼女と遥の浮気である。二人と一体の奇妙な三角関係。北を目指すのは贖罪のためか、あるいはただ自分のためか……。



第一幕 二人に吹雪く、ラジオの音が。

SE より一層強い吹雪
一瞬の静寂
静かな吹雪の音
自動車の走る音

鉢呂遥(24)「ねぇ照。ガソリン足りるかな」
照「昨日入れたばかりだから大丈夫だろ」
遥「昨日……。ちょっと心配じゃない?」
照「そうか? とはいえこの辺にガソリンスタンド、確か無かったと思うぞ」
遥「調べるよ。……げ。スマホ、バッテリー切れ。照、君の貸してよ」
照「同じく」
遥「弱ったね」
照「まぁ切れないだろ」
遥「吹雪止むかなぁ」
照「いつまで続くんだろうな」
遥「ラジオでやってないかな」
照「ラジオな。調子悪くてな」

SE ラジオのチャンネルを回す音
ザーッというノイズ音

遥「うーん」
照「遥、諦めよう」

SE ノイズ音、消える

遥「こうも吹雪だと。あー、暇だ。吹雪のヤツも空気読んで止んでくれないかな」
照「天気に文句言っても仕方ないだろ」
遥「到着まであとどのくらい?」
照「さっき豊富温泉が見えたから……。一時間ぐらいだな」
遥「一時間!? やってらんないよぉ」
照「お前なぁ。文句ばっかり言うなよ」
遥「言いたくなるよ。こんな遠いなんてさぁ」
照「それは謝るけど」
遥「だいたいさ。何で宗谷岬なわけ」
照「逃げるなら遠くってのが無難だろ」
遥「そうだけどさ。日本最北端の地、宗谷岬。何もそんな目立つところじゃなくても」
照「日本の一番北に行ってみたいって言ってたんだよ」
遥「誰が」
照「彼女が」
遥「やっぱりね。そうなんだろうな、とは思ってたけどさ。何で今更」
照「今更っていうか今しかないだろもう」
遥「もしかしてさ。償いをしなきゃとか思ってない?」
照「そんなんじゃないけど」
遥「なら、なんで」
照「生前は俺が忙しくてあんまし出掛けたりもできなかったからよ。だからまぁ」
遥「それを償いって言うんじゃないの。普通のパターンとはちょっと違う気もするけど」
照「うーん」
遥「ちゃんと自首して法の裁きを受けた方が償いにはなると思うけどね」
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