おしゃべりなパーチン
ヨウムのパーチンがいる。
 パーチンはどうみても人間だが、動作はヨウムそのもの。

パー「シュウデンイッタカラオハナシシヨ。キュウカンチョウ?カワイイー」

 男が入ってくる

パー「コンバンハ!タスケテ!タスケテ!」
男 「もう安心だぞ…」

飼主が出てくる

飼主「何かご用ですか?」
男 「あなたはこの子を虐待してる!」
パー「コレキュウカンチョウ?」
飼主「いきなり何なんですか?何のご用?」
男 「この子を助けに来たんです」
飼主「誰かに頼まれたんですか?」
男 「この子が僕に助けを求めたんです。」
パー「カワイイーカワイイー」
飼主「ああ…確かに言いますね」
男 「と、言う事なので」

 男、パーチンを連れて行こうとする。

パー「キャ…(悲鳴をあげかけるが留まる。しかしひどく怯えはじめる)」
飼主「ちょっと!」
パー「ヤメテ!キュウカンチョウナンデス!ヤメテ!」
飼主「静かにしなさい!(パー黙る)あなた、どうしてそんな事を?」
男 「この子が僕に助けてって言ったんです」
飼主「よく言うんですよ」
男 「なおさら問題だ!何で誰も助けなかったんだ!」
飼主「ヨウムが別に外で飼われてても不思議じゃないでしょう!」
男 「九官鳥って言ってますけど」
飼主「通行人が面白半分に言葉を教えていくんですよ。おかげで自分が九官鳥だと思い込んでる。つまりですね。本当に助けが必要なわけじゃないんです!」
男 「ちょっと落ち着きましょう」
飼主「(釈然としないが)はい」
男 「(ひじを指し)ここは何て呼びますか?」
飼主「ひざ…いや、ひじですね」
男 「その通り。でもひじって呼ぶ必要もないですよね。ピザでもピジでもいい。仰る通りひざって呼んでもでも別にいいじゃないですか。どう呼ぼうとこの部位の働きは変わらないんですから」
飼主「うーん…?」
男 「言葉なんて当てにならないってことですよ。本人がそう思うなら九官鳥でいいじゃないですか。だからタスケテがヘルプミーの意味じゃなくても僕は構いません。だからこの子を連れて帰る」
飼主「だからって何の権利があってそんな事を?別にあなたがパーチンのためにそこまでしてやる義理はないですよね?」
男 「この子パーチンって言うんですか?」
飼主「ええ」
男 「いえ、僕がやらないとダメなんです」
飼主「何でですか?」
男 「パーチンが助けを求めていたからです」
飼主「それはさっき聞きましたよ。だから…」
男 「もっと自由にさせるべきだと思います。毎日ここで変わり映えのしない日々を過ごすのは幸せだと思いません」
飼主「でも…」
男 「僕は自分が自分である必要を感じられなくて。親しい人もいなくて誰にでも出来る仕事して終電で帰って。そんな中でパーチンが僕に言ってくれたんです。タスケテって」
飼主「…いいすか?」
男 「(聞かず)僕は嬉しかった。有象無象でしかなかった僕に救いのナイトとしての役割を与えてくれたんです。だから僕はパーチンを助けてあげないと」
飼主「仮にですよ?助けた後はどうする予定なんですか?」
男 「一緒に楽しく暮らします」
飼主「はぁ…失礼ながらご職業は?」
男 「さっきから黙って聞いてれば!」
飼主「そうでもなかったでしょ」
男 「職業で人を判断しちゃダメッ!」
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