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大富豪になりたい

漫才

大富豪になりたい
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　作：海部守
時：
所：
登場人物
・Ａ
・Ｂ

Ａ　　　大富豪になりたい。
Ｂ　　　またいきなりなんですか。
Ａ　　　大富豪になりたい。
Ｂ　　　気持ちはわかりますけど、こんな世の中ですから大金を持ってたら危ないですよ。
　　　アポ電強盗って知ってますか？　あんなのに襲われてしまいますよ。
Ａ　　　大富豪になってアポ電強盗をやっつけたい。
Ｂ　　　もうなに言ってるのかよくわからなくなってきましたよ。どういうことですか？
Ａ　　　大富豪になって城を建てます。
Ｂ　　　お城で戦うんですか？　兵隊も雇って？
Ａ　　　城のどこかにお宝を隠します。
Ｂ　　　そんなの狙いに来るじゃないですか。
Ａ　　　宣伝広告を出します。
Ｂ　　　来ちゃう来ちゃう。全国から来ちゃう。
Ａ　　　ネットでも世界の言葉でコマーシャルをします。
Ｂ　　　全世界からやってきちゃいますよ！　なに考えてるんですか。
Ａ　　　城の中には罠がいっぱいあります。下手をすると怪我をします。
Ｂ　　　罠でやっつけるんですか？
Ａ　　　直接は過剰防衛になりますからね。
Ｂ　　　罠でも過剰ですよ。
Ａ　　　不法侵入ですから怪我をしても知ったこっちゃありませんよ。
Ｂ　　　残酷。でも、住むのに苦労しませんか？
Ａ　　　住みませんよ。
Ｂ　　　え？
Ａ　　　お宝が置いてあるだけです。誰もいません。私はうんと遠くの四畳半の部屋で暮
　　　らしています。
Ｂ　　　大富豪なのに？
Ａ　　　大富豪になる目的は強盗を退治することですから、持ってるお金は全部城と罠に
　　　つぎ込むんです。
Ｂ　　　じゃあ、日々の生活費はどうするんですか？
Ａ　　　それはお城をネット中継して広告収入を得るんですよ。
Ｂ　　　なるほど。
Ａ　　　ゴキブリホイホイみたいに次から次へと強盗がやってきて罠にかかっていくわけ
　　　ですよ。これはもう世界中大爆笑の大興奮ですよ。
Ｂ　　　そんなに上手くいきますかねぇ？
Ａ　　　人間の欲望には際限がないんですよ。
Ｂ　　　さっきも聞きましたけど怪我をしたらどうするんですか？
Ａ　　　さっきも言いましたけど知りません。別にイベントの参加者じゃないんでなにか
　　　を募集してるわけでもありませんし。
Ｂ　　　でも、広告打ってるじゃないですか。
Ａ　　　難攻不落のお城にお宝が眠る！　落とし穴の下で僕と握手！
Ｂ　　　あんたも落ちてるじゃないか。
Ａ　　　ちょっと今月厳しかったんで、取りに行ったら落ちちゃって。良かったスマホ持
　　　ってます？
Ｂ　　　なにをいきなり始めるんですか。
Ａ　　　ああ、ダメだ。電波妨害してるんだった。
Ｂ　　　あんたアホですね。
Ａ　　　もう少ししたらワニが出てくる時間だから捕まえてそれを食べよう。
Ｂ　　　生で食べるのは危なくないですか？
Ａ　　　火ならそのうち火の玉が落ちてくるから大丈夫。
Ｂ　　　ワニって５０センチくらいですか？
Ａ　　　ここに入れたときはそのくらい。
Ｂ　　　今は？
Ａ　　　今？
Ｂ　　　今。
Ａ　　　５メートルくらい？
Ｂ　　　食われる食われる。こっちが食われる。
Ａ　　　あれ？　あんたなんでここにいるんだ？　さては泥棒だな！
Ｂ　　　失礼な！　私はあなたに巻き込まれただけですからね。
Ａ　　　残念だったな。ここにはお宝はないんだ。
Ｂ　　　なんだって！　一体どういうことだ！
Ａ　　　城と罠に全財産を使ってしまって、お宝を買うお金がなかったのだ！
Ｂ　　　あなた本当のアホですね。もういいわ。ありがとうございました。
Ａ　　　ありがとうございました。

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