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愛色のマリア

更新3/26

愛色のマリア

登場人物
明乃透（あけのとおる）：高校2年生。美術科。
伊藤愛（いとう　あい）：高校2年生。美術科。

●作中サルビアという花が出てきます。ググってイメージを掴んでおいてください。
●写実絵画についてググっておいてください。面倒な人は写真みたいな絵という認識でいいです。
●アトリエでの掛け合いシーンがあります。シーンのイメージが不鮮明な方は
　『画家　アトリエ』で画像検索してなんとなくのイメージを掴んでください。

愛　明乃透様へ。
　　お久し振りです。ずっと迷っていたんだけど、やっぱり貴方にはこうやって言葉を伝えるのが
　　1番相応しいのかな、と思って手紙を書くことにしました。
　　遅くなってごめんなさい。でもなにを書けばいいか分からなくて。
　　色々考えてるうちにずいぶん時間が経っていました。
　　気付けば君と最後に会ってから、もう１年以上過ぎちゃったんだね。
　　透の誕生日もとっくに終わって、本当ならそろそろ受験のシーズンかぁ。
　　……。……あぁ、そうだ。この手紙を書こうと思って、季節外れだけどアイスを買いました。
　　買って、君と最後に笑ったあの夏を思い出しました。……だからその時の話をしていいですか？
　　あの日、透と初めて話をした高校2年の夏休み。美術室でのいつかの話をーー

●夏休み中。人のいない美術室。描きかけの絵がたくさん並んでいる。
　愛がクラスメイトの絵を塗り潰そうとした所に透と遭遇。咎められている最中。
　透が愛を無言の圧で責め立てるような構図で立っている。かなり重い雰囲気。
　夏のジワッとした空気と時計の音が続く。沈黙の後、透が切り出す。

透　お前、美術部辞めろ。
愛　……え？
透　え？じゃねえよ。何度も言わせんな。もう来るな。絵も描くな。なんで。とか言うなよ。
　　自分がなにしようとしたかわかってんの？見られてないとでも思ったか？……ま、そうじゃなきゃあんな事できないか。
愛　……っ
透　言えよ。……何したか言えって。
愛　……ぬ、……塗り潰そうとした。
透　何を。
愛　……絵を。
透　アイツに何か恨みでもあったわけ？
愛　……。
透　伊藤先生、今日来てたよな。呼ぼうか？
愛　やめてっ！……お願い、お願いだからっ！それだけは……辞めて。
透　担任が母親だもんなぁ。俺でもそうなるよ。伊藤……あー、お前名前なんだっけ？
愛　……愛。
透　は？（意外そうな顔）……なんて書くの。
愛　え……愛情の、あい。
透　伊藤愛？
愛　（うなずく）
透　ふぅん……あっそ。……そっか。

●間

愛　……？
透　（溜め息）……名前、覚えたから。わかってるよな？俺らの学科1クラスしかないし、さっきの事言いふらされて
　　家とか教室にいられなくなるの嫌だろ。なら残りの高校生活大人しく、
愛　あ……あの！！……あの、謝るから、だから……
透　なに。
愛　……許してください。
透　俺はなにもされてないけど。

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