Zion-シオン-
『Zion』






少女 A
旅人 B
村娘 D
奴隷商 E
見張り兵 F
砂漠町の女王 D
宿屋の主人 F
野盗A E P20以降の野盗
野盗B G
呪いの大樹の端末 C
ナレーター G
娘 A

兼ね役で7人


1-1

音響イン
ナレ入る。
明転

ナレ  「マスター、スコッチロック。それから・・・・・・あぁ? どちらさん? へー、初めてなんだ。大丈夫大丈夫、この店別に一見さんお断りとかじゃないから。っと、悪い。急に話しかけちまって。ちょっと今、人を待ってるんだ。けどなかなか来なくて、退屈しててな。そうだ、ちょっと付き合ってくれよ。大した話じゃない。お互い、暇つぶしのネタには困ってるだろ? ただの昔話だよ。・・・・・・かつて、村があった。おい、そんな顔するなよ。『昔々~』ってあるだろ? あれだよ。んで、名前は何と言ったかな。ただその村、争いも無ければ殺しもない。特に目立った犯罪もない。もめたって言えば、この前羊飼いの本をうっかり野ヤギが食っちまったってことくらいな。平穏そのもの、そんな村。この世界のどっかにあるらしいっていう、伝説の大樹の町くらい平穏平穏。進化も無ければ退行もない、停滞。ずっと時間が止まっている。ここはそういう村だ。そんな平和な村に一つ異常があるとすれば、不釣り合いなほど頑丈な檻があることくらいだ。広場を抜け、農地を歩き、村に二つある宿屋の、人気のない方の宿屋『黄金の雄山羊亭』の裏の井戸。そのすぐそばにある倉庫の地下にはそれはそれは頑丈な檻がある。それがいつできたのか、はたまた何のために作られたのか、それを知る者は誰もいない。猛獣だって、それこそグリフォンだって破れないであろう檻。噂ではその昔、村を襲った獣を捕まえて餓死させるためってことらしいが、直接見たことないからどうとも取れる話だ。つまるところ何が言いたいかっていうと、これは俺が聞いた、ある少女の話ってこと。酒のつまみに聞いてくれ」

ナレはける。
暗転
音響フェードアウト

1-2

音響イン
 少女、入る。
明転(少女)

少女  「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・! ――――ふぅ・・・・・・よかった、崩れてない。誰も・・・・・・いないわよね。ふぅ、よしっ」

錆びたドアを開ける音
コツコツコツと階段を下る音(しばらく続く)。

少女  「ちょっと少なかったかな・・・・・・それに時間経っちゃったからパン固くなってるかも・・・・・・食べてくれるかな」

階段を下る音、止む。
鉄格子をノック。

少女  「起きてるかしら、旅人さん」

 旅人入る。
明転(旅人)

旅人  「あぁ」
少女  「良かったぁ。あのね、晩御飯持ってきたの。もう次の太陽が昇る準備をしているけれど、夜に違いはないわよね。はいこれ、晩ご飯よ。早く食べちゃって。また衛兵の真似事した小麦畑のお坊ちゃんが来ちゃうわ。それにね、最近村長のとこにいるお姉ちゃんもなんか変なことばっか言ってるし」
旅人  「こんな遅い時間に・・・・・・親は何も言わないのか?」
少女  「パパとママ? いないわ、二人とも、私がちっちゃいときにいなくなっちゃったの。それより食べて。もう遅いかもだけど・・・・・・悪くなっちゃうから」
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