願い叶えば
二人の約束
 ある真夏の神社。たくさんの蝉の声が。(奈々、ゆっくり登場。周りを見渡し、木を見上げる、
後ろから神主の娘、りんが。)

りん「この木、春になるときれいな桜が咲くんですよ、ホントに見とれてしまいそうな…」

奈々「…そうなんですか」

りん「はい。でもこの時期はめったに人が来なくて…来るとしても小学生が遊びに来るくらいです」

奈々「そうですか」

りん「今日、どうかしたんですか?」

   言った直後、鞄の名前を見るなり、何かに気づく。

奈々「いえ…なんだか懐かしい感じがして。何でだろう…。」

りん「小さい頃、遊んでたとか?」

奈々「さぁ、そうかもしれないですけど。」

りん「…え?」

奈々「私、過去の記憶がないんです。一度記憶してもすぐに消えてしまう。でも不思議とこの場所は懐 かしく感じて。」

りん「そうだったんですか。」

奈々「えぇ…。見てみたいな。桜の花……」

りん「じゃあ、見に来たらどうです?」

奈々「私もそうしたいのは山々なんです。でも仮に見たところで私の記憶には残らないし、それに…」

りん「…?」

奈々「…私、もうすぐ死んじゃうんです」

りん「どうして。」

奈々「私、病気で。記憶が消えるのもそのせい。医者からもあと生きて3か月って言われてて。」

りん「それって」

奈々「『余命宣告』ってやつです。聞いたときは驚いたんですけど、記憶が消えてしまうなら同じかなって。」

りん「…」

奈々「なんかすいません、初対面の人にこんなこと話して。」

りん「初対面じゃないですよ。」

奈々「え?」

りん「知ってますか?この神社のどこかに一つだけ願いを叶えてくれるお札があるんです。」

奈々「そうなんですか」

りん「はい。でも願いを叶えてくれるのは本当に一つだけ。その一度を使ってしまうと効果はなくなってしまうんです。」

奈々「でも、どこにあるんですか?」
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