路上に咲く花
タイトル 「路上に咲く花」
作・うゐ春菜

■あらすじ
誰のことも騙せないダメな詐欺師が、最終試験として、路上ミュージシャンを詐欺に引っ掛けることを決意する。作戦会議は師匠がマスターをしている喫茶店で行い、どこかミステリアスな新人アルバイトの少女に手厳しく指導される。調査を進めるうちに、詐欺師はあまりにも純粋な彼女を騙すことに対する迷いが強くなるが、あるときから彼女が姿を見せなくなる。詐欺師が少女に詐欺の失敗を伝えると、少女の秘密が解け始める。

■メッセージ
「見つけてくれて、ありがとう」のひとことにすべてを込めました。全部で11役ありますが、役者は最小で5人いればできるように作りました。

■登場人物
詐欺師・・・・・・・本作の主人公。だめな詐欺師。人柄の良さだけは師匠に褒められている。
友人・・・・・・・・・詐欺師の友人。過去の関係は明かされていないが、弟分のような立ち振る舞いをする。
女子大生・・・・・喫茶店でアルバイトをしている女子大生。何かと面倒見がよい。
マスター・・・・・・・詐欺師の師匠であり、喫茶店を営むマスター。腹の底が見えない渋い切れ者。
少女・歌手・・・・本作のヒロイン。喫茶店では冷徹で辛辣な発言をするが、その真意は異なる。
おじさん・・・・・・・路上ライブの管理や整備を担当している音楽好きのおじさん。
青年・・・・・・・・・十六年前の事故の加害者。
酔っ払い・・・・・・十六年前の事故の被害者。
アルバイト・・・・・三年後の喫茶店のアルバイト。かつての女子大生を彷彿とさせる、あっけらかんとした性格。
男子中学生・・・近所の男子中学生。青春真っ盛りの模様。
宅配便の男・・・男子中学生の兄で、大学生。仲よし兄弟である。
エキストラ・・・・・※雑踏描写の際に、可能であればエキストラを使った演出も考慮できる。

■人数および配役方法について
一人一役の場合 男8人、女3人(全11人)
最多兼ね役の場合    男3人、女2人(全5人)
  ?@詐欺師
  ?A友人・青年・宅配便の男
  ?Bマスター・おじさん・酔っ払い・男子中学生
  ?C少女・歌手
  ?D女子大生・アルバイト

■本編■

【Scene 00】

午後10時頃。駅前の雑踏。街の流れるスピードは弱まることを知らない。
複数の足音と、街の騒音に掻き消されながら、かすかに聞こえるギターの音と少女の歌声。
人々の表情は見えない。残業帰りや飲み帰りの会社員や、合コン帰りの若者の集団や、塾帰りの学生たち。平日の夜に都会を彷徨う不特定多数の※エキストラ。

青年が酔っ払いとぶつかる。

酔っ払い   「おい。何かないのか。」

青年は完全無視で歩いている。

酔っ払い   「謝罪もできんのか。まったく。どうしてだろうな。なぜお前のような生ごみが世の中を一人前の顔をして歩いているのか、私には理解できないな。」

青年、足を止め、振り返る。

酔っ払い   「ああ、時代は変わってしまった。ずいぶん悪くなったもんだ。だいたいだ、ろくな用事もないくせに、こんな時間に街中をふらふらと……。」

酔っ払いのぼやきの間に歩を進めた青年が、酔っ払いの正面に立つ。
と同時に、隠し持っていたナイフをポケットから取り出し、酔っ払いの腹部を刺す。
酔っ払いが膝から崩れ落ちる。

酔っ払い   「ぐっ……。」

気がついた周囲の人々は皆、さっと自分の身を引く。
ざわめき。ざわめきの中心には、青年と酔っ払いと、路上で歌っていた少女の姿。
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