ある小説家の白昼夢
ある小説家の白昼夢

門田 総一郎  男
柴崎  男
後藤  男
田中 優希  女
天王寺 望  男
水谷  女
鈴木  男



 第一幕
 門田の部屋。門田が板付きで机の傍らに座り込んでいる。
 原稿用紙に向かって何か書き込むが、すぐに用紙をくしゃくしゃにする。
 それを何度か繰り返し、最終的に何もかも投げ出すように仰向けに倒れる。
 携帯の着信音。携帯をとる門田。

門田 「もしもし?」
後藤声「あ、門田さん?」
門田 「げ……」
後藤声「あ、今露骨に嫌そうな声出した」
門田 「そんなことないです」
後藤声「私だってね、もううんざりなんですよ!毎日毎日門田さんに締め切りの催促の
    電話をするのは。いっつも返事は“まだです”“もうすぐできます”ばっかりだし!」
門田 「すんません……」
後藤声「まぁ、あなたも年下の担当者にへこへこするのは嫌だと思うんですけどね、
    それもこれも門田さんがいつか売れっ子になる為に……」
門田 「わかりました、わかりましたから。で、今回も締め切りの催促なんでしょう?」
後藤声「その通りです。どうですか、何かいいもの書けましたか?」
門田 「……まだです。もうすぐできます」
後藤声「またそれだ!昨日も同じ言葉が返ってきたんですけど?」
門田 「とにかくもうすぐなんです!じゃ、忙しいんで切りますね!」
後藤声「あ、ちょっと門田さん!?」

 門田、携帯を閉じる。

門田 「はーあっ!どうせいいものなんて書けてませんよ!もうすぐだなんて嘘ですよ!
    さっぱり何も思いつかないし……大体、半年に一回しか出ないような雑誌の
    連載なんてやる気でねえっつーの!」

 インターホンの音。

門田 「こんな時に誰だよ。どうぞー開いてますよー!」

 スーツ姿の柴崎がコンビニの袋を持って入ってくる。

柴崎 「よー門田」
門田 「柴崎」
柴崎 「どう?執筆活動は進んでる?」
門田 「さっぱり」
柴崎 「はは、だと思った」
門田 「で、何しに来たの」
柴崎 「別に。この近くの営業先に挨拶回りしてきた帰りで、ついでに様子でも
見ようかなって。はいこれ、差し入れ」

 柴崎、机にコンビニの袋を置いて座る。

柴崎 「今は何書いてるの?」
門田 「半年に一回しか出ない、マイナーもマイナーな雑誌の連載。
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