朗読版 ベランダー・ドリーム
朗読版 ベランダー・ドリーム 高平 九
妻A
妻B
夫A
夫B
語り
│ 1 プロローグ
│
│BGM
│
語り │えー皆さんこんにちは。これから「ベランダー・ドリーム」という朗読劇をご覧いた
│だきます。上演時間は約35分です。最後までおつきあいください。
│
│突然ですが、皆さんは宝くじを買ったことがありますか?当選したら何を買おうなん
│て、当たってもいないのに想像したりして……。このお話もそんな宝くじにまつわる
│お話です。
│舞台はどこにでもあるマンションのベランダ。階は何階でもいいんですけど、四階っ
│てことにしておきましょうか。登場するのは、隣り合った部屋の二組の夫婦たち。部
│屋のベランダには薄いしきり板があり、その板をはさんで話をしていると御想像くだ
│さい。
│
│さて、今日は五月下旬の金曜日。時刻は午前十時を回った頃。
│
│おや、向かって右手の主婦が布団を干しています。布団の真ん中には小さなシミがあ
│ります。誰かがおもらしをしたみたいですね。そこに隣の部屋の主婦が洗濯カゴを提
│げて出てきました。
妻B │こんにちは。
妻A │こんにちは。いい天気ですね。
妻B │ほんと。亭主のパンツなんか干してないで、どっか行きたいわ。
妻A │ほんとですねえ。
妻B │その布団のシミ……子どもさん?
妻A │ええ。最近治ってたんですけど……。
妻B │おいくつ?
妻A │九歳です。
妻B │小四かあ。うちの子も少し遅かったかな。最後におもらししたの一年生の頃だったか
│しら……。
妻A │……そうですか。遅い子でも小学校に上がる頃には治るっていいますよね。
妻B │そうねえ。もっとも、うちの子は中学一年だったけど。
妻A │えっ?
妻B │あれなんじゃない?環境が変わってストレス感じてるのよ。うちの子もちょうど三年
│前このマンションに越して来た頃だったもの。小学校の友達が誰もいなくて、なかな
│か友達できなくてさ。……学校は行ってる?
妻A │ええ。一応。……転校が原因なんでしょうか。
妻B │大丈夫。すぐに馴れるって。ほら、クラスが変わるだけで五月病になっちゃう子もい
│るって言うじゃない。子どもは繊細なのよ。学校行かなくなる子もいるらしいし……。
妻A │……そんな。不登校にでもなったら……。
妻B │大丈夫だって。あなたが神経質になったら、子どもさんにも影響するよ。それにこの
│前テレビでやってたんだけど。大物ほどいつまでもおねしょの癖が抜けなかったって。
妻A │大物って誰ですか?
妻B │ええと、誰だったかなあ……?
妻A │…… (微妙な空気)
妻B │ところで、ドリームジャンボもう買った?
妻A │ドリーム、ジャンボ?……宝くじ?
妻B │そろそろよね。締めきり。それにしてもなかなか当たらないのよねえ。
妻A │一等五億円かあ。夢ですね。
妻B │買っても買ってもダメ。ねえ、当たったって人、知ってる?
妻A │いいえ、誰も……。でも、結構当たった人いるんじゃないですかね。言わないだけで
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