コント 巨星堕つ
「コント 巨星墜つ」
         古澤 春一

登場人物
・老人
・青年
・警備員

全一幕
・上手、下手にそれぞれサスの明かりがあるのみ。地明かりは落ちている。
・上手は屋上、下手は地上である。上手には「立入禁止」の立て札。
・上手には老人とバック。老人はよぼよぼの服を着ている。

―――オープニングテーマ

―――幕が上がる。

―――下手サスがつく。青年がひとり。

青年「おーい。おじいさーん。聞こえますかー。早まらないでくださーい!」

―――上手サスがつく。

老人「うるさい。わしの好きなようにさせてくれ」
青年「あなた、自分が何をしようとしてるのか、わかってるんですか。そんな危ないことはやめてください」
老人「なんだと若造。危険なことは重々承知だ。命が惜しいとでも思ったか」
青年「おじいさん。動かないでくださいね。今、人呼んできますから」
老人「おい、馬鹿者。やめんか」

―――上手に警備員登場。

青年「警備員さん。こっちです。ほら、屋上見てください。あのおじいさんです」
警備員「あ、またあのじいさんか。おーい、じいさん。やめないか。何回目だと思ってるんだ」
老人「何を言っても無駄だぞ。わしはもう決めておるんだ」
青年「初めてじゃないんですか?」
警備員「そうなんだよ。人騒がせなじいさんでね。今回で5回目なんですよ。どんなに言ってもきかなくて。おーい、じいさーん。早く中へ入れよ。立入禁止って書いてあるだろ」
老人「誰がこんなもん見るか」
警備員「困るんだよ。そんなところ、こそこそ登ってっちゃ」
青年「おじいさーん。もういい年なんだから。人騒がせなことはやめてくださいよ」
老人「いいか。わしはやるといったら、やるんだ。邪魔するな」
警備員「やるのは勝手だけどな、下手すると死ぬかもしれないんだぞ」
青年「いや、絶対死にますって」
老人「こんなことで死ぬわけないだろ」
青年「だから死んじゃいますって」
老人「お願いだ。1回だけでいいからやらせてくれ」
青年「1回やったら終わっちゃうんですよ」
老人「うん。1回やったら終わりにするから」
青年「そういう意味じゃないです」
警備員「そうだ。下にいる人が危ないじゃないか」
青年「そうじゃないでしょ。おじいさーん。頭冷やしてください」
老人「頭どころか全身冷えておるわ。屋上だから」
警備員「こっちは迷惑なんだよ。他のお客さんのことも考えなさいよ」
老人「ちょっとで終わるから、許してくれよ。やったらすぐ帰るから」
青年「やったら帰れませんよ。」
警備員「しょうがないなあ。そんなに言うんなら、1回だけだぞ」
青年「何言ってるんですか。あなたの責任ですよ」
警備員「あ、そうか。おれの責任か。それはまずい。やっぱりダメだ。じいさーん。冷静になれよ。そんな馬鹿げたことはするな。ここでやらなくてもいいだろ」
青年「どこでもダメですよ」
老人「馬鹿げたこととはなんだ」
警備員「また家族呼びますよ」
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