happy ending
「happy ending」
舞台はどこにでもある公園である。中央にはベンチがあり、その近くには吸殻入れが設置されている。
明転。ベンチに座って煙草を吸っている男1。上手より女1が出てくる。手には小包を持ち、周囲を窺いながら男1の元へと近づく。
女1「あの」
男1「はい、何でしょうか?」
女1「会って早々こんなことを頼むのも気が引けるのですが…」
男1「え?煙草ですか?頼まれたって吸うのは止めませんよ。何てったってここは皆の公園ですからね。煙草を吸うくらい私みたいなおっさんにも許されるはずだ」
女1「え?いえ、そうではなくて…」
男1「なに?違う?それじゃああなたもしかして私の煙草を吸いたがっているというわけ?いや、駄目ですよそれは。確かにここは皆の公園で皆に煙草を吸う権利は与えられてるけれど、私の煙草を吸う権利があるのは私だけなのですからね」
女1「えぇ、それはもうおっしゃる通り…」
男1「と言うとあれか?私みたいなのがいると公園の景観が崩れるから出てけってことですか?生まれて早34年。そんな扱いを受けるのは初めてですよ、心外だなぁ」
女1「だからそうではなくて…」
男「なに?私が呼吸するたびにこの星の貴重な酸素が失われていく?地球温暖化防止のために呼吸を止めろですって?確かにこの広大な地球を救うためなら私みたいな矮小な存在は自己犠牲の精神に乗っ取って自殺を選んだ方がいいでしょうな。しかしね、あなた…」
女1「(堪えきれず)だから違うって言ってますでしょう!!」
男1「(萎縮して)…え、は、はい」
女1「落ち着いて聞いていただけますか?」
男1「えぇ…」
女1「こんなこと簡単なことだったのです。本来なら二三言交わして終わるはずだったのに、あなたが長々と聞かれてもないことをしゃべるから」
男1「すみません…」
女1「まぁ、いいでしょう。あなたに頼みたいのはこれです(と、男に小包を示す)」
男1「小包ですか?」
女1「えぇ、これを私が戻ってくるまでの間、と言ってもせいぜい10分くらいですが、預かっていただきたいのです」
男1「えぇ、まぁそれくらいでしたら構いませんよ、お受けしましょう」
女1「ありがとう、助かります。それでは私は一端離れますから、小包のこと頼みましたよ(男に小包を渡す)」
下手に去る女1。舞台に一人残った男1。再び煙草にふけっている。少し経つと、小包の中身が気になり始め、袋を振ってみたり陽に透かしてみたりしている。気づくと上手に男2が現れ、男1の様子をじっと眺めている。
男1「(男2の視線に気が付き)あ、どうもこんにちは」
男2「こんにちは。さっきから何をしていたんです?」
男1「いえ、ちょっとした預かりものをしたのですが中身が無性に気になってしまいましてね」
男2「ほうほう」
男1「いや、でもやはりこういうのはよくない。大人しく持ち主が戻ってくるのを待つとしますよ」
男2「いや、それはどうでしょうか。我々には確認の義務があるかもしれませんよ」
男1「どういうことです?」
男2「今のご時世そんな簡単に他人に私物を預けるものでしょうか?大荷物を持っていたならまだ頷けますが、そうではなかったでしょう?」
男1「えぇ、軽装でした」
男2「となると、その小包は何か意図があってあなたに渡された」
男1「意図?」
男2「この公園で見知らぬ他人に小包を託すことに意味があったんです。そう例えば、これはあくまで可能性の話ですが、その人は最近巷を騒がしている犯罪者で、次のターゲットに運悪くあなたが選ばれた」
男1「犯罪者!?じゃあこの小包の中身は…」
男2「最近の事件から類推するにおそらく…爆弾です」
男1「(一瞬あっけに取られるがすぐに気を持ち直し)ば、ばば爆弾ですって!?」
男1、恐怖から小包を遠くへ投げようとするが、男2に制止させられる。
男2「落ち着いてください!下手に衝撃を与えようものなら爆発してしまいますよ!」
男1「だからといってこれをこのまま持ってるわけにもいかないでしょう!」
男2「落ち着いて!まずは落ち着いてそれをベンチに置いてください。話はそれからです」
男1「(慎重にベンチに小包を置き、距離を取る)置きました、置きましたよ。それでどうするんです?」
男2「私が爆弾と言ったのは最悪の事態を想定してのことです。実際はもっと違うなんでもないものが入っているかもしれない」
男1「確認しろと?私は嫌ですよ!下手に触って爆発しようものなら洒落になりませんからね」
男2「分かりました。私が確認しますので、あなたはどこか茂みにでも身を隠していてください」
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