ありがとう
        ありがとう
御肉 大好

登場人物
はじめ(男)

ひとり芝居。マイムの部分が多い。声を出す台詞は「ありがとう」の一言のみ。

舞台には、簡素なイスが一脚。
出てくる男は、黒い練習用の服装のような、無機質な感じ。
曲とともに始まる。

キャッチボール・・・・子どもの頃のはじめ。
しゃがみこんで、ありの列をみている。ありが、虫をかこんでいるようだ。
そばにいる父に、見て見てという感じで何かを話しかける。
父に、もう行こうと言われたのか、父の手を握り歩き出す。
歩いている最中に、この前行ったデパートに来ていた大道芸人からもらった大きな風船の話をする。
しばらくして、父とキャッチボールをする。
はじめが頑張って投げる。父が取った。
今度は、はじめが、いいよ〜と手を振ったりする。
父が投げる。3バウンドくらいして、来た球を目で追いながら、はじめがキャッチする。
捕ったことを喜ぶはじめ。再度、投げる。父が取る。
再度、はじめが、いいよ〜と手を振る。
父が投げる。3バウンド・・・しかし、はじめは、とんねるしてしまう。
球は、後ろへ・・・球を追いかけるはじめ。球はだいぶ転がって行ってしまった。
そこへ、自転車で通りがかりの青年が来て、球を拾ってくれた。
青年は、「この球、君の?」と聞いたのか、はじめは、あいさつをする。
そして、はじめが、いいよ〜と手を振る。
青年が投げる。1、2、3、4、5・・・バウンド。はじめがキャッチする。
よほど嬉しかったのだろう、大きく身振り手振りする。
そして、行こうとする青年に・・・

「ありがと〜う」


プレゼント・・・・高校生くらいのはじめ。
好きな女の子に、クリスマスプレゼントを渡そうと、校門の陰に隠れている。
彼女が来た。彼女が目の前を行過ぎる。彼女の後ろから、軽く肩をたたく。
彼女が振り向く。照れくさそうなはじめ。
「何か用事?」とでも言われただろうか、もじもじしながら、背中から、さっとプレゼントを出す。
よくわからないようだ。はじめが、「プレゼントだよ。」と説明する。
彼女は、まだ良くわからない。はじめが「君にだよ。プレゼント。」と何度か説明するが・・・
彼女は、いらないと言って、去っていった。
しょんぼり歩いていると、傍らにゴミ箱が。プレゼントをゴミ箱に捨ててまた歩く。
ふと、誰かに肩をたたかれ、振り向くと、見知らぬ女性がいた。
きょとんとしていると、その彼女は、何かを、はじめの前に差し出した。
何かわからずに、?としていると、その彼女は「プレゼント」と言った。
「? 僕に?」と再確認。どうやらそうらしい。
そのプレゼントを受け取り、まだ笑顔の彼女が握手を求めてきたので、握手した。
ようやく、事が少しずつ飲み込めてきた・・・
彼女の笑顔もあり、少しほっとした。

「ありがと」


赤ちゃん・・・・大人になったはじめ。
昨年結婚し、幸せな夫婦生活を送っている。
ここは病院。産科の待合室。まもなく待望の赤ちゃんが生まれてくる。
落ち着かない・・・
赤ちゃんを抱っこするまねをしたり、いないいないばあの練習?をしたりしているが・・・
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