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猫と雨女

『猫と雨女』

登場人物

篠原（男・会社員）

ミドリ（女）

　１

　　　　　人気が少ない夜のバス停
　　　　　雨が降っている

　　　　　バス停の裏手側、路地裏の入り口周辺に野良猫が密集している
　　　　　どうやら、野良猫の溜まり場のようだ

　　　　　屈み込み、猫の集団に鳴き真似をして話しかけているミドリ
　　　　　傘を差しておらず、濡れ放題

　　　　　帰宅途中の篠原が通りかかる

　　　　　怪訝な様子でミドリを見るが、やがてバスがやって来る

　　　　　バスに乗り込む篠原

　２

　　　　　数日後、夜のバス停
　　　　　相変わらず人気が少なく、雨が降っている

　　　　　以前と同じく、ミドリが路地裏の猫達に話しかけている

　　　　　篠原がやって来る

　　　　　早く着き過ぎたためか、所在無げに立ち尽くしている

　　　　　篠原、ミドリの方を見る
　　　　　やがて、ゆっくりとミドリに近付く

　　　　　びしょ濡れのミドリを見かねて、傘を差し出す篠原

ミドリ　（篠原に気付き）……？
篠原　　あ、いや……。風邪、ひきません？
ミドリ　平気、慣れてるから。
篠原　　良かったら、あげますよ。使ってください。
ミドリ　いいよ、大丈夫。（と、猫に話しかける）
篠原　　……猫？
ミドリ　そうだよ、可愛いでしょ？
篠原　　あ、うん。たくさんいるなぁ。
ミドリ　（猫を指さして）これが、お母さん。これがお兄ちゃんで、これが妹。それで
　　　　こっちにいるのがお兄ちゃんの友達で、こっちがまたその友達。
篠原　　本当に？
ミドリ　本当だよ。お父さんは、事故で死んじゃったんだって。かわいそう。
篠原　　そうか……。
ミドリ　あなたは？
篠原　　え？
ミドリ　いつも、ここからバス乗ってる人でしょ。
篠原　　あ、ああ……。知ってるの？
ミドリ　いつも見てたから。

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